スワっ! 事件か!!

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     二日前の昼ごろ、庭で二階の部屋あたりからのべつまくなしにけっこうな

    音量でラジオの音が聴こえてる、はて? と思ったんだわさ。ま、いいか、

    なんて思ってたんだけどね。それがいつまでも続いているんだ。おっかしいな? 

    見上げれば窓は閉まっているように見える、けど。音は明瞭に聴こえる、から

    きっと窓が少し開いてるんだろうな。気にはなるけど、昼間だし、と地下で

    仕事してたんだ。

     

    あたいの家は、離婚して以来、母親が営み始めた貸間業が主たる収入源で、

    平成元年に建て替えて後も続いているんだ。陽当たりの悪い一階にワシの

    家族が住んで二階三階がアパートになってる。その二階からラジオの音が

    鳴り響いてるというワケ。

     

     夕方になり、まだ鳴り続けているラジオ。おっかしいな?のココロは

    肥大し、ヤバイかもしれないに変わる。夜になっても一向に小さくなること

    もない音量でね、こりゃどう考えても変でしょ、なにか事件が起きたのか?

    あるいは起きつつあるのかと疑心暗鬼は膨らむばかり。まいったな〜、誰か

    殺されてるんじゃないのか。世間を騒がしている白石被告みたいのがさ、

    侵入しているのかもしれない。そんな暗雲がココロに迫って来る。家賃

    収入けっこうなことですね、なんて言われるけど、良いコトばかりじゃ

    ない、苦労もある、その最たるものが密室で起きる事件だ。

     

     それにしてもラジオが鳴り続ける理由がわからない。最初は、タイマーが

    作動して、無人の部屋でラジオがON? なんて考えたのよね。でも今どき

    タイマーでラジオのスイッチを入れるなんて御仁いないよな。それとも

    自然死? ラジオ聞きながら死んでいた、いやだいやだ、勘弁してよね。

    はたまた、侵入者に暴行され、死ぬ直前にラジオのスイッチONして「誰か

    助けてくれ」の合図なの?とか、縄で縛られて身動き出来ない、唯一動く

    指先でラジオを点けて「HELP ME!」なのか、と妄想は膨らんでやむことが

    ない。どうしても考えは悪い方向に流れてしまいます。

     

     夜中になっても止むことはない。朗々という感じなんだ。なにか事件勃発

    な考えで眠れないじゃんか。もっと早くなにか対応しときゃいいじゃんと

    言われるだろうけど、部屋は借り主のもんで大家といえどもそうそう立ち

    入ることはできないのよね。手をこまねいているわけじゃないけど、

    さりとて有効な手段を講じるアイデアも出なくって、まんじりとしない

    夜はふけるのでありまする。

     

     朝方5時に目が覚める。あたりはまだ暗く、静けさ増す中、ベッドの中で

    耳をすませばラジオは相変わらず堂々と鳴り続けてるのがかすかに聞こえる。

    部屋に行って確認してみるか? 部屋を開けるには誰か立ち会ってもらわなく

    ちゃならない。警察か? でもこんな時間にパトカーやってきて赤灯くるくる

    なんてことになったら近所の皆様起き出して、大変なことになる。さらにもし

    事件なんてことになったら新聞にゃ載るし野次馬は来るしTVのレポーターも

    押し掛けてくるだろ。アパートの住人はみんな引っ越して空室だらけに

    なっちゃう。いやですよ、そんなこと。と、アタイの小心はまるで海から

    上がった直後のチン個みたいに縮こまる。

     

     で、朝だ。ウトウト寝てしまったんだな。8時じゃん。明るくなったから、

    まずは呼び鈴押してドアノックしてみよう、と意を決して着替える。一人

    じゃ心もとないカミサンと一緒に目当ての部屋の前に立つ。ピンポン押す前に

    ドアに耳をくっつけてもラジオの音が聴こえないんだ。この時点でラジオの

    音源位置がわかりそうなもんだけど、そうはゆかない思い込み。てっきり

    ラジオは部屋の中にあると思い込んでるコチトラ、思い返してみれば

    情けない。

     

     まず角部屋、ベル押せども、出て来ない、しかたなくこわごわ合鍵で

    ドアを開けて、覗いてみればだれもいない。しかも無音。ふ〜む、不在か。

    となると隣りの部屋しかない。で、隣りの部屋のピンポン押す、出て来ない、

    しかたないから合鍵を差し込みそ〜っとドアを開けたそのときに内側から

    住人が出て来た。

    「ラジオの音がするんだけど?」

    と問えば、

    「ごめんなさい、言おうと思ったんだけど、ラジオ落としてしまったの」

    なんてこったい! 窓からラジオ落としてしまい、それが庇に引っ掛かり、

    寒くて暗い外で一人孤独に鳴り続けていたわけっすか!!

     

     一件落着、あ〜よかった。まさに胸をなで下ろすとはこのことだ。

    すぐに階下に直行、庇を見ればあるじゃあ〜りませんか、ラジオがさ。昔風の

    小さなトランジスタラジオは外にあったのね。だからあんな明瞭に聴こえて

    いたんだ。考えてみれば高音が際立つ音だった。一聴して鳥の声かと思った

    ほど。その時点でこりゃ小さなラジオだなと気が付くべきだったんだ。

    オーディオ愛好者のあたいならラジオの音でスピーカーの大小の判断が

    つくべきなんじゃないか。でもな、どう考えたって、そんときにゃそんな

    こと到底思えなかったよ。思いは及ばなかったし、余裕もなかったかんな。

     

     それにしてもラジオ落とすか!  なんで窓際にラジオ持参するんだ! 

    洗濯物ならわかりますよ、でもまさかラジオなんて!!  誰も思いつき

    っこない。かくして恐怖(マジで)のサスペンス満載な一夜は一気に

    終焉を迎えたのでありまする。

     

    大山鳴動、ちっこいラジオ一個の顛末・・・・・・な、店主でした。

     


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