左稽古にビツクリ

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     愛読している東京新聞、朝刊の「私の東京物語」に楊逸(ヤンイー)氏登場。

    1987年3月14日に初来日したときの出来事だ。

     

    「成田空港から一時間ほどの空港バスで着いた新宿で、艶(あで)やかな電飾

    に染まる夕暮れに突っ立っていた私の目の前を、着物姿の女の子の一団が

    ゲラゲラと笑い声をあげながら通り過ぎていった、というものだった。卒業式

    帰りの女学生たちだったらしい」

     物心つく前からの東京暮らしの私には生まれてこの方こんな体験はしたこと

    がないから、うらやましいなぁのココロ。中国から来て、見た事もない東京

    に大きな刺激を受けるなんてこと、今の私には到底ムリだもんな。

     

     「当時、『ファッション』という単語も知らなかった私だったが、外国に

    行くというので、さすがに人民服は違うだろうと、親に強請(ねだ)ってその

    頃中国で流行っていた袖とズボンに白いストライプが入った青のジャージーを

    買い、『格好を決め』浮き浮きして日本に飛び立ったのに、その時の気分は、

    己の墨色に酔いしれたイカが、熱帯魚の群れに迷い込んだようなものだった」

     前文に続いてこの一文に笑いをこらえることはできない。内心大爆笑だ。

    といっても決してバカにしてるわけじゃぁない。そんときの彼女の驚きが

    面白い、っていうか面白すぎる。このジャージー、新宿の日本語学校への

    行き帰り、警官になんども尋問された後日談もある代物。なんたってこれ

    っきゃないんだからしかたない。けど怪しいと思う警官のココロもわかる、

    しかもですよ日本語全然まるっきりわからないっていうんだから、こりゃ

    まるで喜劇ですよ。しかたないから「すみません、すみません」(これしか

    知らないんだろ)を繰り返し、学生証を見せ、指で日本語学校の方向を指す

    のだった、と。

     

    「なんだか色めいていて美しい、なんだか平穏で豊かそう、なんだかささやか

    ながら楽しそう、なんだか・・・・。とにかく空気に『幸せ』の匂いが漂い、

    それに魅せられた。言葉もわからず、両親が数十年かけて蓄えた日本円で

    三万円の貯金(ひと月生きられるかどうかもわからないような金額)しか

    持っていないのに、新しい別世界に来たのだと直感し、不思議と胸が膨らむ

    ・・・・・。」

     けっこうな衝撃を受けつつも、その場の雰囲気を感じ取る感受性に感心。

    今になって考えてみればってことかもしれないけど。わかりやすい言葉で

    ありながら豊かな表現ができることは作家としての可能性はすでにあった

    と思ったりもするけど、考え過ぎかね。

     ともあれ、若いってことは素晴らしいなぁ、つくづく思う。ここんとこ、

    こんなこと思うことに出会わないもん。知らないとはいえ、たった三万円

    持って外国に行ってみよう、行ってみたいと思う衝動はとても理解出来るし

    大きな共感を感じまする。漠然と将来の事考えはいるけど、それより

    なにより今やりたいことをやってみたい気持ちが優先しちゃうんだろな、

    きっと。こんな私だって、彼女ほどではないにしろ若いときにはいろんな

    ことやったもんな。これが将来なんかの役に立つだろうなんて気持ちは

    ほとんどなかった。すべては好奇心の赴くままにってことでしかない。

     

     近時、これほどの一文に出会ったことはなく、いっぺんに彼女のファンに

    なってしまった。1964年生まれっていうから53才か、会って飲みたいな。

    まずは、著書でも読みませう・・・・・・・な、店主でした。

     

     タイトルの「左稽古」がすっかり忘れられてる。困ったもんだ。いえね、

    まずは楊逸氏のことを前説でと思って書き始めたら止まらなくなって。

    左稽古っていうのは京都・井上流の踊りの教え方です。BSで観てこれまた

    ビックリな私にとっちゃの出来事でね。教えるときに、生徒と対面して

    教える井上流では、教師は鏡に映ったように左右逆の身振り手振りで

    なきゃイケナイ。げっ!と思ったアタイだ。そんなこと出来るんかいな!

    出来るんだな、これが。扇を持つ手の位置、高低の位置やひらひらな動き、

    これらすべて左右どちらでも出来るっていうんですから、驚くじゃ

    あ〜りませんか。観た場面では座って教えてたけど、もちろん立っても

    出来るんだろう。右に回るときにまったく同じように左にも回れるって

    ことなんだろ。なにも言われなければわからないけど、言われてよ〜く

    観ればオドロキですよ。

     

     ま、それ以外にもいろいろあってさ。唸りまくってのアタイ、伝統を

    守るっていうのはこういうことかい、改めて感じ入るのであった。

    チャンチャン。コレデオシマイ。

     


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